2010年12月27日月曜日

インナースーツ

久々のブログです。

今日は、インナースーツのことについて記そうと思います。

最近日本でも、ドライスーツの専用インナースーツが良く見られるようになってきました。

日本では、インナースーツといえばこれ一色という感じですが、世界的に見ると、結構色々なメーカーがインナースーツを販売していたりします。

しかし結論から言えば、トータル性能的にはどのインナースーツもほぼ一緒と思って良いと思います。

「トータル性能的に」と書いたのは、特に中綿の素材にはそれぞれ特徴があり、1点だけみれば、やはり得手不得手というものはあるからです。

どうしても得手不得手が出てしまう理由は、中綿がどれだけの空気を保持するかによって、エア抜けか、エア持ちかという、どう頑張っても両立はできない2点のどちらかが良くなり、もう一方が悪くなってしまうからです。

エア抜けが良ければ、機動性的には絶対に有利です。しかし、保温性はインナースーツの厚みで決まってしまい、エア量による保温性の調整はできません。無理にエア量を増やせば、吹き上がりのリスクが高まってしまいます。

エア持ちが良ければ、エア量による保温性の調整ができるようになります。つまり、ウェイト量を増やして、その分多量のエアを入れれば保温性をさらに高められるわけです。しかし反面、エア抜けに時間がかかるので、機動性は若干犠牲になります。

エア抜けが良いインナースーツの代表が、イギリス Fourth ElementのXerothermです。日本には残念ながら入ってきていませんが、最近はインターネット通販も簡単になりましたので、入手は難しくないと思います。

エア持ちが良いインナースーツの代表が、同じイギリスのWeezleです。これは最近日本でも人気がありますので、見かけられたことがある方も多いと思います。

両者の中間にも色々な素材があります
↑エア持ち良
  • Weezle
  • シンサレート Cタイプ
  • シンサレート BZタイプ
  • シンサレート Bタイプ
  • Xerotherm
↓エア抜け良

といった感じでしょうか。 繰り返しますが、トータル性能的には、どれも似たり寄ったりです。
自分のダイビングスタイルに合わせて、自分が特に望む特性を有する素材を選べば良いと思います。

2010年1月4日月曜日

トイレ対策

今回は、新年にふさわしい話題?ということで、ドライスーツのトイレ対策について書きたいと思います。

一番のトイレ対策は、「ドライスーツを着ない」ことだという方もいるでしょうが、ここではドライスーツを着ることは前提にして話を進めることにします。

水分を控えればいいじゃん、という方もいるかと思いますが、あまり良い方法ではないですね。水分不足の状態では血液の粘度が高くなり、減圧症発症のリスクが高まります。ダイビング前は水分を控えるというのは、どう考えても勧められません。

で、ドライスーツ内での「小」の処理方法ですが、だいたい3つの方法があるようです。




紙おむつ
少なくとも日本では一番普及していると思われる方法です。男女兼用です。某現地サービスのスタッフの方に聞いたら、冬場の週末は、ビニール袋に包まれたこれが、日に数個は更衣室のゴミ箱に捨ててあるそうです。ここは、ボートから一度に複数のポイントにダイバーを下ろし、帰りも順々に上げるというスタイルなので、2時間以上トイレに行けないことがあるという特殊事情がありますが...ビーチでも、浅場で撮影なんかしていて、潜水時間90分、とかいうダイバーは結構使っているようです。NASAの宇宙飛行士も宇宙服の時は紙おむつを当てるらしいので、結構いけてる方法のような気もしますが、最大の問題は水圧です。水中では水圧のために、吸収容量が激落ちするんですね。「オシッコ6回分」、が水中の1回分に相当する感じです。「朝までグッスリ超スーパー」とか、そういうタイプのが確実です。この中に用を足して、なおかつドライスーツの内側は洗わない、ということであれば、パンツタイプではダメで、テープタイプのものが必須のようです。保険としておむつ、という人であれば、パンツタイプもそこそこ使えるでしょう。下の2つとは違い、イザというときは「大」にも対応しているのはメリットと言えるかもしれません・o・





ピーバルブ
海外では結構使われているみたいです。チューブを通じてドライの外に「小」を排出する器具です。ドライの大腿部に穴を開け、両側から挟みこむようにして取り付けます。スクイズでチューブが潰れたり、イザという時に外部の水が入ってきたりしないように、2個の逆流防止バルブが組み込まれています。






集尿器
旧型は、スネまたはフトモモに装着するタイプでしたが、貯めておける量が少ないのと、使い心地が今ひとつという理由で、ピーバルブの登場により取って変わられたようです。しかし最近、下腹部に装着する新型が登場し、吸収容量や使い心地が大幅に改善されたため、復活の兆しもあるようです。ホースのシルエットは浮き出ますが、装着していることはぱっと見分かりません。
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貯められた尿は、ドライスーツを脱いだ際にインナーの前開きからバルブを引き出して排出します。スーツと身体を接続しないため、ドライスーツの着脱はピーバルブよりも容易です。


ピーバルブや集尿器を「人体」に接続するのには、まあ当然と言えば当然ですが

コンドーム

を使います。そこら辺で売られているアレではなく、やたらと分厚く、また内側は強力な粘着で、あそこが寒さで縮み上がったくらいでは簡単には外れないような代物です。実際に装着した人の話では

締めつけ感がとっても気持ちイイ

そうです。

2009年12月29日火曜日

フード

今回は、アクセサリ絡みの1発目の話題として、フードのことについて書きたいと思います。

日本では、ほとんどのドライスーツダイバーが、いわゆる「モジモジ君」タイプのフードを使っているのではないかと思います。しかし、10℃を切るような水温になってくると、フードを被っていてもまだ冷たい。

そんな時に使われるのが、頬まで完全に覆ってくれる「アイスフード」です。

これを被ると、たしかに暖かいことは暖かいのですが、内部にエアが溜まりやすいし、レギをくわえたり外したりがしにくいし、フードの着脱もしにくいしで、想像以上に使いにくいものです。これを使うくらいなら、一層のことフルフェイスマスクを使った方が楽かもしれません。そっちの方が間違いなく保温性も高いし。


日本では、ドライスーツを着た後に、別に被るセパレートタイプのフードがほとんどですが、海外では、ドライスーツ本体と一体化したフードも使われています。特に、北欧では、一体フードが標準で、セパレートにするのがオプションというドライスーツメーカー(スウェーデンのVikingやフィンランドのUrsukなど)まであります。
フードをスーツ本体と一体化する第1のメリットは、頭部の保温性が高まることです。顔面周りから多少の浸水はあったとしても、水がガバガバ出入することはないので、格段に保温性が高くなります。第2のメリットは、スーツ本体への浸水が、ネックシールとフードで二重に防止されることです。ネックシールがジャストフィットしているつもりでも、エキジットしてみたら首周りが浸水していたということは非常に多いと思います。10℃程度の水温であれば、少しの浸水は全く問題になりませんが、アイスダイビングともなると、この少しの浸水が非常な体温喪失につながります。このような環境では、フードをスーツ本体と一体化すれば、首周りの浸水が抑えられ、大きなメリットがあるというわけです。スーツ一体型のフードとしては、通常のフードのようなネオプレン製のもの(上の写真)の他に、ネックシールと同様のラテックス素材を使ったもの(下の写真)や、
スーツ本体と同じ素材でできたフード(下の写真)
等があります。これら素材のフードは寒地対応というよりも、汚れが染み込まないというメリットを活かして、汚染水域でのダイビングに使われることが多いようです。

スーツ本体とフードを一体化することには、メリットばかりでなくデメリットもあります。最大のデメリットは着脱が難儀になることでしょう。それぞれ単独でも頭を通すのが大変なネックシールとフードを両方同時に着脱しなければならないのですから、慣れていないと相当着脱に苦労することになります。着脱のしづらさは倍ではすみません、どんなに控えめに見積もっても3倍、もしかしたら5倍くらい大変かもしれません。北欧の環境では、そんなデメリットがあってもお釣りがくるほどのメリットがあるということなのでしょうが、日本の標準的なダイバーにとっては、メリットよりもデメリットの方が多いのでしょう。


2009年12月19日土曜日

バイラミネート

今回は、バイラミネート素材について記したいと思います。
バイラミネートというのは、防水性シートの片面に布地をラミネート(つまり、貼りあわせた)素材です。

この素材の特徴は、防水性シート面をテープ処理することで、(破損しない限りは)浸水する隙間が全くない、非常に防水性に優れたスーツを製造できることにあります。

実は、一口にバイラミネートと言っても、防水性シートを外側にするか内側にするかで全く異なった性質のドライスーツが出来上がります。

防水性シートを外側にしたドライスーツは、素材に水分を吸収することがありませんので、汚染された水や、極寒環境でのダイビングに特に適しています。一旦布地に浸透した汚れは、完全に除去することが困難ですが、表面に布地が一切露出していなければ問題ないわけです。また、気温が0℃を下回るような環境では、素材に吸収された水分が、エキジット後に凍りついてしまい、スーツの柔軟性を著しく損なうような事がありますが、素材が水分を吸収しなければ、このような問題も生じないというわけです。
さらに、生地の合わせ目(シーム)も、水にさらされることがありませんので、繰り返し水分が浸透することでシームが劣化して、ついには内部に水が滲み出す、ということもないわけで、シームの耐久性にも優れたスーツにすることができます。

欠点として、防水シートが外部に露出しているため、強度の高い素材しか使えない、ということがあります。そのため、あまりフレキシブルなドライスーツにはできず、ヘビーデューティー専用の素材といった感じでしょうか。

実際、このタイプのスーツで市販されているものは、ほとんど全てが作業潜水用です。

の写真は、このタイプでは代表的な、スウェーデンTrelleborg社の"Viking Pro 1000"です。防水層は天然ゴム/EPDM(合成ゴムの1種)でできています。欧米の作業潜水やレスキュー&リカバリーでは最も標準的に使われているドライスーツです。「バルカナイズ工法」という方法で、シームに貼りあわせたテープと生地表面が完全に一体化しており、非常に防水性に優れています。

これは、カナダWhites社の”Enviro Com 10”です。防水層はポリウレタンでできており、各部材は、「熱圧着」という方法により、一切糸を使わず接合されており、上のスーツと同様、非常に優れた防水性を有します。



これは、フィンランドUrsuk社の"Pursuit X3"です。上の"Enviro Com"と同種の素材、工法で作られたドライスーツです。



3つ全てのドライスーツに赤が使われているのは偶然ではなく、作業潜水用である以上、危険防止のためには現場で目立つ赤を使うことが必須ということなのでしょう。フードも全て一体型ですし、グローブも、手を水に濡らさないドライグローブを使うようになっています。

バイラミネート素材のもう1つのタイプ、内側防水層のドライスーツについてはまた次回記すことにします。

2009年12月11日金曜日

ドライスーツの素材

ドライスーツの素材について書いていきたいと思います。

初回の今回はトライラミネートについてです。

トライラミネートは、ゴムなどの防水層の両側に、ナイロン、ポリエステルなどの布地を貼りあわせた素材です。3層を貼りあわせているから、トライラミネートと呼ぶわけです。防水層の素材には、ブチルゴムが使われている場合が多いようです。

メリットとしては、防水層が露出していないので、摩擦に対し非常に強く、またピンホールが発生しにくい特長があります。機械的強度を考慮せずに防水層の素材を選択できますので、防水性や耐経年劣化に優れた素材(その代表がブチルゴムというわけです)を使うことができるのもメリットと言えるでしょう。

デメリットとしては、素材の接合が縫い合わせになり、また両面とも繊維質のために、シームの完全な水密が困難なことがあります。実際、トライラミネート製のドライスーツは、シームからの漏水によりダメになるケースが多いようです。素材自体の耐久性は非常に高いのに残念ですね。また、汚れがつきやすい、乾きにくい というのも、表面が繊維質な素材の宿命でしょう。

この素材を使ったスーツで有名なのは、日本でも割と入手しやすい、米DUIのTLS350です。(下の写真)
世界的に見れば、かなりの数のメーカーがこの素材を採用しています。
(下の写真は英Northern Diver社のCortex)
次回は、バイラミネートについて記そうと思います。