2009年12月29日火曜日

フード

今回は、アクセサリ絡みの1発目の話題として、フードのことについて書きたいと思います。

日本では、ほとんどのドライスーツダイバーが、いわゆる「モジモジ君」タイプのフードを使っているのではないかと思います。しかし、10℃を切るような水温になってくると、フードを被っていてもまだ冷たい。

そんな時に使われるのが、頬まで完全に覆ってくれる「アイスフード」です。

これを被ると、たしかに暖かいことは暖かいのですが、内部にエアが溜まりやすいし、レギをくわえたり外したりがしにくいし、フードの着脱もしにくいしで、想像以上に使いにくいものです。これを使うくらいなら、一層のことフルフェイスマスクを使った方が楽かもしれません。そっちの方が間違いなく保温性も高いし。


日本では、ドライスーツを着た後に、別に被るセパレートタイプのフードがほとんどですが、海外では、ドライスーツ本体と一体化したフードも使われています。特に、北欧では、一体フードが標準で、セパレートにするのがオプションというドライスーツメーカー(スウェーデンのVikingやフィンランドのUrsukなど)まであります。
フードをスーツ本体と一体化する第1のメリットは、頭部の保温性が高まることです。顔面周りから多少の浸水はあったとしても、水がガバガバ出入することはないので、格段に保温性が高くなります。第2のメリットは、スーツ本体への浸水が、ネックシールとフードで二重に防止されることです。ネックシールがジャストフィットしているつもりでも、エキジットしてみたら首周りが浸水していたということは非常に多いと思います。10℃程度の水温であれば、少しの浸水は全く問題になりませんが、アイスダイビングともなると、この少しの浸水が非常な体温喪失につながります。このような環境では、フードをスーツ本体と一体化すれば、首周りの浸水が抑えられ、大きなメリットがあるというわけです。スーツ一体型のフードとしては、通常のフードのようなネオプレン製のもの(上の写真)の他に、ネックシールと同様のラテックス素材を使ったもの(下の写真)や、
スーツ本体と同じ素材でできたフード(下の写真)
等があります。これら素材のフードは寒地対応というよりも、汚れが染み込まないというメリットを活かして、汚染水域でのダイビングに使われることが多いようです。

スーツ本体とフードを一体化することには、メリットばかりでなくデメリットもあります。最大のデメリットは着脱が難儀になることでしょう。それぞれ単独でも頭を通すのが大変なネックシールとフードを両方同時に着脱しなければならないのですから、慣れていないと相当着脱に苦労することになります。着脱のしづらさは倍ではすみません、どんなに控えめに見積もっても3倍、もしかしたら5倍くらい大変かもしれません。北欧の環境では、そんなデメリットがあってもお釣りがくるほどのメリットがあるということなのでしょうが、日本の標準的なダイバーにとっては、メリットよりもデメリットの方が多いのでしょう。


2009年12月19日土曜日

バイラミネート

今回は、バイラミネート素材について記したいと思います。
バイラミネートというのは、防水性シートの片面に布地をラミネート(つまり、貼りあわせた)素材です。

この素材の特徴は、防水性シート面をテープ処理することで、(破損しない限りは)浸水する隙間が全くない、非常に防水性に優れたスーツを製造できることにあります。

実は、一口にバイラミネートと言っても、防水性シートを外側にするか内側にするかで全く異なった性質のドライスーツが出来上がります。

防水性シートを外側にしたドライスーツは、素材に水分を吸収することがありませんので、汚染された水や、極寒環境でのダイビングに特に適しています。一旦布地に浸透した汚れは、完全に除去することが困難ですが、表面に布地が一切露出していなければ問題ないわけです。また、気温が0℃を下回るような環境では、素材に吸収された水分が、エキジット後に凍りついてしまい、スーツの柔軟性を著しく損なうような事がありますが、素材が水分を吸収しなければ、このような問題も生じないというわけです。
さらに、生地の合わせ目(シーム)も、水にさらされることがありませんので、繰り返し水分が浸透することでシームが劣化して、ついには内部に水が滲み出す、ということもないわけで、シームの耐久性にも優れたスーツにすることができます。

欠点として、防水シートが外部に露出しているため、強度の高い素材しか使えない、ということがあります。そのため、あまりフレキシブルなドライスーツにはできず、ヘビーデューティー専用の素材といった感じでしょうか。

実際、このタイプのスーツで市販されているものは、ほとんど全てが作業潜水用です。

の写真は、このタイプでは代表的な、スウェーデンTrelleborg社の"Viking Pro 1000"です。防水層は天然ゴム/EPDM(合成ゴムの1種)でできています。欧米の作業潜水やレスキュー&リカバリーでは最も標準的に使われているドライスーツです。「バルカナイズ工法」という方法で、シームに貼りあわせたテープと生地表面が完全に一体化しており、非常に防水性に優れています。

これは、カナダWhites社の”Enviro Com 10”です。防水層はポリウレタンでできており、各部材は、「熱圧着」という方法により、一切糸を使わず接合されており、上のスーツと同様、非常に優れた防水性を有します。



これは、フィンランドUrsuk社の"Pursuit X3"です。上の"Enviro Com"と同種の素材、工法で作られたドライスーツです。



3つ全てのドライスーツに赤が使われているのは偶然ではなく、作業潜水用である以上、危険防止のためには現場で目立つ赤を使うことが必須ということなのでしょう。フードも全て一体型ですし、グローブも、手を水に濡らさないドライグローブを使うようになっています。

バイラミネート素材のもう1つのタイプ、内側防水層のドライスーツについてはまた次回記すことにします。

2009年12月11日金曜日

ドライスーツの素材

ドライスーツの素材について書いていきたいと思います。

初回の今回はトライラミネートについてです。

トライラミネートは、ゴムなどの防水層の両側に、ナイロン、ポリエステルなどの布地を貼りあわせた素材です。3層を貼りあわせているから、トライラミネートと呼ぶわけです。防水層の素材には、ブチルゴムが使われている場合が多いようです。

メリットとしては、防水層が露出していないので、摩擦に対し非常に強く、またピンホールが発生しにくい特長があります。機械的強度を考慮せずに防水層の素材を選択できますので、防水性や耐経年劣化に優れた素材(その代表がブチルゴムというわけです)を使うことができるのもメリットと言えるでしょう。

デメリットとしては、素材の接合が縫い合わせになり、また両面とも繊維質のために、シームの完全な水密が困難なことがあります。実際、トライラミネート製のドライスーツは、シームからの漏水によりダメになるケースが多いようです。素材自体の耐久性は非常に高いのに残念ですね。また、汚れがつきやすい、乾きにくい というのも、表面が繊維質な素材の宿命でしょう。

この素材を使ったスーツで有名なのは、日本でも割と入手しやすい、米DUIのTLS350です。(下の写真)
世界的に見れば、かなりの数のメーカーがこの素材を採用しています。
(下の写真は英Northern Diver社のCortex)
次回は、バイラミネートについて記そうと思います。