2009年12月19日土曜日

バイラミネート

今回は、バイラミネート素材について記したいと思います。
バイラミネートというのは、防水性シートの片面に布地をラミネート(つまり、貼りあわせた)素材です。

この素材の特徴は、防水性シート面をテープ処理することで、(破損しない限りは)浸水する隙間が全くない、非常に防水性に優れたスーツを製造できることにあります。

実は、一口にバイラミネートと言っても、防水性シートを外側にするか内側にするかで全く異なった性質のドライスーツが出来上がります。

防水性シートを外側にしたドライスーツは、素材に水分を吸収することがありませんので、汚染された水や、極寒環境でのダイビングに特に適しています。一旦布地に浸透した汚れは、完全に除去することが困難ですが、表面に布地が一切露出していなければ問題ないわけです。また、気温が0℃を下回るような環境では、素材に吸収された水分が、エキジット後に凍りついてしまい、スーツの柔軟性を著しく損なうような事がありますが、素材が水分を吸収しなければ、このような問題も生じないというわけです。
さらに、生地の合わせ目(シーム)も、水にさらされることがありませんので、繰り返し水分が浸透することでシームが劣化して、ついには内部に水が滲み出す、ということもないわけで、シームの耐久性にも優れたスーツにすることができます。

欠点として、防水シートが外部に露出しているため、強度の高い素材しか使えない、ということがあります。そのため、あまりフレキシブルなドライスーツにはできず、ヘビーデューティー専用の素材といった感じでしょうか。

実際、このタイプのスーツで市販されているものは、ほとんど全てが作業潜水用です。

の写真は、このタイプでは代表的な、スウェーデンTrelleborg社の"Viking Pro 1000"です。防水層は天然ゴム/EPDM(合成ゴムの1種)でできています。欧米の作業潜水やレスキュー&リカバリーでは最も標準的に使われているドライスーツです。「バルカナイズ工法」という方法で、シームに貼りあわせたテープと生地表面が完全に一体化しており、非常に防水性に優れています。

これは、カナダWhites社の”Enviro Com 10”です。防水層はポリウレタンでできており、各部材は、「熱圧着」という方法により、一切糸を使わず接合されており、上のスーツと同様、非常に優れた防水性を有します。



これは、フィンランドUrsuk社の"Pursuit X3"です。上の"Enviro Com"と同種の素材、工法で作られたドライスーツです。



3つ全てのドライスーツに赤が使われているのは偶然ではなく、作業潜水用である以上、危険防止のためには現場で目立つ赤を使うことが必須ということなのでしょう。フードも全て一体型ですし、グローブも、手を水に濡らさないドライグローブを使うようになっています。

バイラミネート素材のもう1つのタイプ、内側防水層のドライスーツについてはまた次回記すことにします。

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